日本独自の食文化?おかずを食べて白飯を食す「口内丼」に賛否 #食の現在地

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日本独自の食文化?おかずを食べて白飯を食す「口内丼」に賛否 #食の現在地

 

日本独自の食文化?おかずを食べて白飯を食す「口内丼」に賛否 #食の現在地(Yahoo!ニュース オリジナル 特集)

Yahoo!ニュース オリジナル 特集
日本独自の食文化?おかずを食べて白飯を食す「口内丼」に賛否 #食の現在地

(kazoka303030 / stock.adobe.com)

インバウンド観光客の増加に伴って、日本食にも注目が集まっている。中でも外国人の多くが驚く食べ方がある。「口内丼」だ。おかずを先に口に入れて咀嚼、その後、白飯をいれて「口の中で丼を完成させる食べ方」のことだ。定食屋などではしばしば見かける光景だが、世間的にはマナー違反と指摘されることがあるらしい。皆さんはどのようにして白飯を食べているだろうか。口内丼派? おかずをのみ込み、余韻で白飯を食べる派? それとも、おかずと白飯は完全に分けて食べる派? 「行儀が悪い」と指摘する人もいれば、「日本の文化」と言う人もいる。果たして口内丼はマナー違反なのだろうか?(取材・文:山野井春絵/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

「口内丼」に賛否両論

焼き肉屋に行って白飯とともに肉を食べる時、どのようにして食べるだろうか。カルビをタレにつけたあと、ご飯の上で「ワンバウンド」させて口に運び、数回噛んだ後、すぐさま白飯をかきこんだ。さらに噛みしめて、おかずとご飯の混ざり合いを楽しむ。 その食べ方、もしかしたら「マナー違反」に当たるかもしれない。「口の中を見せて食すことはマナー違反」という根強い考えがあるからだ。一方で「給食では“三角食べ”(おかず、ごは、汁物を三角を描くように順番で食べ進める方法)が推奨されていることから、問題ない」という声もある。果たして口内丼はマナー違反なのだろうか。

「口中調味」の論文を書いた専門家は

日本独自の食文化?おかずを食べて白飯を食す「口内丼」に賛否 #食の現在地

(sasazawa/ stock.adobe.com)

「日本では昔から、白飯とおかずを交互に食べて、口の中に残るおかずの味で白飯を味付けしながら食べる『口中調味』がなされてきました。白飯・おかず・汁で構成される食事様式は、だいたい室町時代に完成したと言われています」 そう語るのは、広島国際大学健康科学部医療栄養学科の准教授、木村留美さん。「口中調味」は日本固有の食事法であるとし、論文を共同執筆した(「口中調味の実施状況が白飯とおかずを組み合わせた食事での白飯のおいしさに及ぼす影響」)。 「あくまでも、口中のおかずの余韻で白飯を食べるというのが、論文における口中調味の定義です。たとえば、味噌汁と白飯を交互に食べるとき、味噌汁を飲み込んだ後に、残った味で白飯を食べるというのが口中調味の前提になっています。『口内丼』という言葉は私も初めて聞きましたが、おかずが残っている状態で白飯を入れるのは口中調味の一種です。食べ方、マナーの問題かと思いますが、一緒に食事をしている方を不快にさせないように行うのが一般的ではないでしょうか」 木村さんは、女子学生、約400名を対象に、「口中調味」の実態を調査。口中調味を日常的に実施していると答えた学生は74.8%、実施していないのは25.5%という結果が得られた。 実施する理由としては、学校給食で指導された「三角食べ(おかず、ごはん、汁物を三角を描くように順番で食べる食べ方)」や「稲妻食べ(白飯とおかずを交互にジグザグ食べる食べ方)」など、食べる順番の教育が影響したと推察している。また、家庭において、家族の食べ方を自然と真似ることで、口中調味を身につけた背景もある。 一方、25%の実施しない群だが、理由としては、「習慣がない」「ひとつだけの味で食べたい」が大半。なかには「食器を持ち替えるのが面倒」と答えた人もいた。 調査するうちに木村さんは、学生たちの米の摂取量がかなり少ないことに気づく。 「実際に学生たちを見ていると、パンや麺など小麦を好み、白飯はあまり食べない人が多くなっている印象ですね。私たちがたとえば学生の給食献立を作成する場合、基本的に白飯で180gを設定するのですが、普段はそこまで食べていないんじゃないでしょうか? もしかしたら一食で100gを下回る人もいるかもしれません。そうなると白飯とおかずをそれぞれ単独で食べるようになるのかもしれません」 コメの消費量が減っている今、「口中調味」の文化は衰退してしまうのか? 「人それぞれ、食べ方はもちろん自由です。日本の伝統的な食事様式である口中調味は、白飯をおいしく味わう工夫。ぜひ今からでも身につけてほしいと思いますね」

「面白い」「抵抗を感じる」欧米人の反応もさまざま

現在、日本国内を旅するインバウンド観光客は増加の一途をたどっている。海外の人は、日本食の文化である「口内丼」についてどのように受け止めるのだろうか。 神奈川県の人気観光地、江の島にある和食店では、日本人に交ざって外国人も多数列をなしていた。 フランスからやってきたという30代のカップルは、ガイドブックのおすすめに沿って、しらす丼とかき揚げ丼を注文。口に運び、「トレボン!(とてもおいしい)」と満足げだ。そこで刺し身定食の写真を指さして、日本には口中調味という食事法があることを説明すると、とても驚いた。 「なるほど、ちょっと抵抗を感じなくもないけど……とても面白い食べ方だね。これができるようになったら、日本にもっと馴染める気がするよ」 一方、「日本のワンプレートご飯に抵抗を感じる」と話すのは、イタリアから来た50代男性。日本が大好きで今回で訪日は5回目だという。 「日本の寿司やラーメンは大好き。でもワンプレートのご飯を出すカフェがあるんだけど、写真を見るだけで抵抗を感じた。サラダにラザニア、肉料理とパン、全部が一皿にのっていることがある。何ならフルーツまでのってる! 基本的にはひとつのメニューを一皿ずつ、順番に食べたい僕たちイタリア人にとって、これはなんだか気持ちが悪い食べ方。もちろん食べられないことはないけど、ちょっと苦手だね」 彼にも口中調味について説明をすると、「ノンエベロ! (嘘でしょ!)」と目を白黒。 「丼なら食べるけどね。何かを口に入れた状態で、その後にご飯を放り込むって、日本人は器用だね。でもやっぱり気持ち悪いね(笑)」

マナーの専門家に聞く「口内丼ってマナー違反なんですか?」

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(撮影:殿村誠士)

「口内丼」は日本の文化的な食事様式だが、実際のところ、マナーとしてはどうなのだろうか。日本マナー・プロトコール協会理事長、明石伸子さんに話を聞いた。 「『口内丼』という言い方は驚きです(笑)。でも、口中調味というのは、ご飯をおいしくいただくための方法だという認識ではおりました。いずれにしても、すべてはTPOの問題だと思いますね。高級な和食店では、素材を生かしてデリケートに味付けされた料理が一品ずつ出されます。基本的にお酒に合わせるものですから、ご飯と一緒にというよりは、料理そのものを味わっていただくほうがおいしい」 では居酒屋や定食屋で口中調味や口内丼をすることはいいのだろうか。 「TPOの問題ですから、気軽な居酒屋や定食屋のような場所で、おかずを口に入れたあとに白飯を食すのは、よく見かけるシーン。定食の生姜焼きなどは、やっぱりご飯と一緒がいいですよね。特にマナー違反だとは思いません。不快に感じる・感じないは人それぞれですが、あくまでも周囲に気を配りながら、楽しい食事をこころがけることが大切ですね」 食事のマナーは、家庭内でしつけられるもの。さらに他者と会食をする経験を重ねて、それぞれの場所での振る舞い方を身につけていくものだと明石さんは言う。 「会席料理などでは、一品ずつゆっくり味わって、最後にご飯と汁物で締める。家庭や、定食屋さん、学食のような場所では、一緒に食べる人たちを不快にさせない前提で、ご自分の好きなように口中調味をして召し上がったらいいのではないでしょうか」 どんな食べ方でも、その人が食事をおいしいと感じられたら、それでいい、と明石さん。くちゃくちゃと音を立てたり、口の中を見せたり、大声でしゃべりながら食べたりという基本的なマナー違反は避けて、大いに食事を楽しんでほしい。

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